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港千尋 著
四六変型判並製 256頁
ISBN978-4-900997-91-2
装幀:永原康史 写真:港千尋
自然の色とスマホの色、そしてプリントされた色、微妙に異なる色調のいったいどれがいいのか悩むとき、現代人は無意識のうちに「本当の色」が気になっている。感情を動かし、音や味にも影響しながら好感度をあげるのは、「本当の色」だろうか、それとも「映える」色だろうか。色の文化人類学から美術、建築、都市計画そして文学や音楽まで、分野を横断するダイナミックな旅をとおして、読者をはるかな虹の地平へと誘う。パンデミックに揺れる時代に、「より良い生活」とは何かを想うすべての人へ向けた、新しい色彩論の登場である。
洞窟壁画に残された最古の絵の具、色を塗り替えてしまった島、民藝が発見した手作りの色、軍事の島から生まれたグレーの探究、史上最も黒いペイント…豊富なエピソードで語られる色の歴史は、現代から四万年に遡る。エチオピアの赤、モロッコの水色、EU離脱に揺れるイングランドの補色、さらにオーストラリアの虹のビーチまで、大陸をまたいで色彩世界を俯瞰するという、時間的にも空間的にもかつてないスケールで紹介される驚きのエピソードは、色の文化がもつ奥深さと面白さを伝えている。バーナード・リーチ、ジャン・ボードリヤール、クロード・レヴィ=ストロース、ジョン・ケージ、ジャック・アタリ、ジャレド・ダイアモンド、吉岡幸雄、保刈実など、幅広い領域から紹介される思想は、今日のアートにとってもデザインにとっても、新鮮なインスピレーションを与えるに違いない。
豊かな色彩に溢れる現代生活。わたしたちの身の回りには自然の色、都市の色、日用品の色に加えて、大小さまざまな画面が表示する色があり、8Kテレビやスマホでさえいまや10億色の再現力をもつという。人間はかつて経験したことのなかったような、大色彩文明を実現しようとしているが、そのような豊かな色彩を、わたしたちはどれだけ理解しているだろうか。本書は世界各地を撮影してきた著者が、人間が色をどのように使い、物質と精神をともに豊かにしてきたのか、さまざまな具体例とともに解き明かす色彩世界へのガイドブック。